真・報連相とは、ひと言でいうと「質の高い仕事の進め方」そのものです。

「これまでの報連相(旧・報連相)」は、やり方・手段が中心でした。5W1Hがよいとか、結論から先に、あるいは口頭よりも文書がよいとか、主にやり方・手段を説明していました。

しかし、質の高い報連相はやり方・手段だけではできません。目的や相手を考えずに、こうしたらよいとやり方・手段を固定化してよいはずがありません。Aさんにはよい報連相が、同じやり方をしてもBさんにはよくない報連相の場合があるのです。

環境(相手)、目的、自己との関連で、やり方・手段である報連相をとらえると、質の高い報連相ができます。技だけではない心技体の報連相、これが「真・報連相」です。

※やり方を磨き、手段を開発することの大切さを否定しているのではありません。「やり方・手段」も大切ですが、「手段へ直行しない」ことが肝心です


旧・報連相 真・報連相
報連相は「報告・連絡・相談」の略称 報連相は『仕事の進め方』そのもの。
(真・報連相は、質の高い『仕事の進
め方』そのもの)
初級社員の「ビジネスマナー」や「職
場のコミュニケーション」といった程
度の浅い認識
組織の上から下まで、全ての社会人に
求められる心技体の報連相(上役から
の報連相→情報によるマネジメント)
個人のビジネススキル 入口は個人の報連相だが、めざすとこ
ろは組織全体の風土改革。(情報の共
有化を深めている組織づくり)
報告・連絡・相談の「基本的なやり方
・手段」を初級社員に教える
「質の高い仕事の成果をあげる人」に
共通する、「仕事の進め方」や「考え
方」を学び、自己の仕事の進め方のブ
ラッシュアップを図る
【旧・報連相の核心】


―(※核心と呼べるものがない)


【真・報連相の核心】
『3つの視点』
『3つの深度』
『3つの方向』
  +
『真・報連相の5段階のレベル表』

報連相は「仕事の進め方」そのもの(報連相の誤解)

旧・報連相の定義は報告・連絡・相談の頭文字を取った略称であり、世間一般の報連相研修といえばその報告・連絡・相談の「やり方」を学ぶことに主眼がおかれていました。しかし、真・報連相では報連相の定義を「仕事の進め方」そのものであると再定義しました。

報連相は「仕事の進め方」そのものである、これはいったい何を言わんとしているのでしょう。

職場内における報連相の本質的な目的(=何のために報連相を行うのか、その理由)は『より良い仕事の成果を上げるため』であり、『それに必要な、情報の共有化を深める取り組み』が報連相です。

しかし、実際の職場を観察研究していると報連相(より良い仕事の成果を上げるために必要な、情報の共有化を深める取り組み)は、報告と連絡と相談だけではないことが見えてきます。たとえば、質問・確認・伝達・引継ぎ・雑談・意見具申(提案)・ヒアリング…等々、より良い仕事の成果を上げるために必要な情報の共有化を深める取り組みは多岐に渡ります。

つまり「報連相」という言葉は、「報告や連絡や相談を含む、職場内での〈情報の共有化を深める取り組み全般〉」のことを指しているのです。それを真・報連相では「報連相は、仕事の進め方そのもの」と一口に圧縮し、簡潔に表現しているのです。

世間一般では報連相という言葉がキャッチコピーとして本質的な意味が伴わないまま一人歩きをしてしまっています。そして、多くの組織では職場内での〈情報の共有化を深める取り組み全般〉の中から、報告と連絡と相談だけを抜き取って、そのやり方だけを学んだり取り組み強化を図ったりするような誤解が生じています。

たしかに、報連相という言葉の語源は報告・連絡・相談の頭文字から来ています。ですがそれは、あくまで言葉の語源に過ぎず、報連相という言葉が真に意味するところそのものではありません。これは旧・報連相の大きな誤解の一つと言えるでしょう。

職場内での〈情報の共有化を深める取り組み全般〉の中から、報告と連絡と相談だけを抜き取る。そんないびつで虫食い状態の学び方や取り組み方をしていては、いつまで経っても職場内の仕事の進め方(報連相)の本質的な改善・解決には至りません。

真・報連相の核心(トリプルスリーとレベル表)

真・報連相の体系を氷山に喩えた図

真・報連相の核心は、【3つの視点】【3つの深度】【3つの方向】からなる「トリプルスリー」と【真・報連相のレベル表】です。

下の図は、真・報連相の体系を氷山に喩えた「氷山図」です。報連相の質を高めて、質の高い報連相(=真・報連相)にしているのが、氷山図の水面下にあるトリプルスリーです。トリプルスリーが、報連相の質を支えています。




核心1:3つの視点

真・報連相は、報連相(手段)を環境(相手)、自己、目的の「3つの視点」でとらえます。次の図はその関連図です。「自己」を含めたところが特徴です。




従来の報連相では、上の人が下位層の人に、報連相の“良いやり方”を求めていましたが、真・報連相では、報連相の大切さに上下は無いと考えます。

質の高い報連相は、経営幹部・管理者にとっても重要課題です。例えば、正直な報告、悪い情報ほど早く・・・などは、上下の別なく誰にとっても必要な報連相の基本です。

その報連相のやり方・手段が、良いか悪いかは、環境(相手)、目的に照らして判断できるものです。「環境」には、自然環境、政治・経済的環境、地理的環境、などいろいろありますが、報連相ですから環境≒相手として説明しています。

例えば、Aさんに対しての良い報告の仕方が、Bさんに対しては悪い報告になることがあります。5W1Hは報連相の基本として重要視されてきましたが、相手が3Wだけを求めている場合には、3Wが良い報告の仕方です。

「手段」の適否は、「環境(相手)」、「目的」に照らして「自己」が判断しますが、悪い目的を選択すると、効果的な手段(相談)も“談合”になります。「環境」を認識して、「目的」を選択(設定)する「自己の在り方」が問われているのです。

私達は、とかく「やり方・手段」へ思考が直行する「手段思考」になりがちです。真・報連相では、まず目的を明らかにし、次に手段を考える「目的思考」を重視しています。

その目的を明確にするのも、しないのも「自己」です。手段を開発したり、磨いたり、するのもしないのも自己です。どのような自己か・・・、自己のワークスタイル(≒性格)も含めて、自己理解が質の高い報連相には欠かせません。

自己を含めた全体状況をみる自己の客観視が、質の高い報連相には必要です。



核心2:3つの深度

連絡とは、関係者による情報の共有化ですが、その共有化は文字とか数字などのデータにとどまらず、意味を共有化し、思いを共にしたいものです。




連絡だけではありません。報告も相談も、する人とされる人の双方が情報を共有化します。つまり、報連相の本質は情報の共有化と言えます。共有化を深めるためには、発信者が目的とか全体状況を伝え、さらに直接対話をすることが大切です。

そして、情報の共有化を深めることは、発信者だけではできません。受信者の「きき方」も重要です。上記の「聞く」「訊く」「聴く」の「3つのきき方」を心得ましょう。「聴く」とは、耳だけでなく、話し手の方を見て、全身で聴くことです。



核心3:3つの方向

相手と、報連相をする際の“心身の方向”は、真・報連相の基盤に関することです。次の「3つの方向」があります。相手に対する「心、あるいは心身」の方向です。


「相手と誠実に向き合う」ことが、真・報連相の基本姿勢です。心が大切です。身体だけ向き合っていても、よそ事を考えていたり、うわの空状態では、質の高い報連相はできません。誠実に向き合うことが肝心です。この基本姿勢の上に、「必要な場合には、寄り添う姿勢」が、自然体でとれることが望まれます。



核心4:真・報連相のレベル表(別名:仕事の進め方の重要事項の一覧表)

真・報連相のレベル表は、「質の高い仕事の進め方」の「重要事項61項目」を、 報連相×5段階のレベル表 として一枚の表にしたものです。(下記の表をクリックすると、レベル表の詳細が閲覧可能です)




旧・報連相では、連絡は「お知らせ」、相談は「上位者の智恵と力を借りること」、といったようなイメージでした。真・報連相では、連絡とは「情報の共有化」であり、相談の本質は「互恵によるシナジー(相乗効果)を求めることにあり」 と再定義しました。

旧・報連相は、もっぱら上の人が下の者に求めていましたが、報連相の大切さには上も下もありません。質の高い報連相は、経営幹部・管理者にとっても重要課題です。

例えば、「正直な報告」「悪い情報ほど早く」などは、上下の別なく誰にとっても重要な報連相です。部下の知らない情報を上位者は持っています。貴重な情報を、下も持っていますが、上も持っています。上が持っている情報の共有化、すなわち「上から下への報連相」が重要です。「そういう事情(背景)があったのか! それを言ってくれていたら、どんなに仕事が進め易かったか・・・」と、腹立たしい思いをした部下は多いのです。

旧・報連相では、「レベル表」でいえば主に3度以下のところが、報連相として守るべき必要項目でした。初級社員向けの「やり方」を中心に説かれていました。レベル表の4度、5度の項目の多くは、視野に無かったようです。視野に無いのは、3つの視点の「自己」とか、「環境」(例えば相手)という視点がなかったからです。また、真・報連相の重要な考え方である、「報連相は、仕事の進め方そのもの」 というとらえ方も、旧・報連相にはありません。

真・報連相のレベル表は、下から上に読みますが、お勧めの活用方法を2つ紹介します。1つ目は、各項目の末尾に「か?」を加えて読むという方法です。例えば、「報告の1度」には、「報告は正直に、という基本原則をわかっている」 という項目があります。

この項目に、「わかっているか?」と、「か?」を付けて自問自答します。そして、できていれば「〇」、できていなければ「×」、どちらとも言えない項目には「△」、そして、意味のわからない項目には「?」を付けながら読みます。読み切ったら、各自の関心の深い項目とか、意味のわかりにくい項目などを、『真・報連相のハンドブック』の該当ページを開いて読んでください。

2つ目は、次のような問いを立て、自己の日頃の仕事の進め方の振り返りに使う方法です。

「普段の仕事で、自分なりに意識的に心掛け、取り組んでいる項目は?」「項目を見て、大切だと感じたが『実際はできていないなぁ』と反省した項目は?」
「上司や先輩の報連相で『素晴らしいな、手本になるな』と感じる項目は?」このような問いかけを自分に対して行い、レベル表の項目を手がかりに日頃の仕事の進め方を振り返り、気付きを得る機会にします。

なぜ、このような2つの活用方法をお勧めするのでしょうか。「レベル表」を読む目的は、「自己の、仕事の進め方の質を高めるヒントを得るため」だからです。 (レベル表と、表の解説をしている「真・報連相のハンドブック」は、ヒントを得る素材です)

レベル表は、報連相の新知識を得るための一覧表ではありません。自己の報連相(仕事の進め方)の質を高めるための、振り返りの手がかりとしての61項目です。